No. 136
発行 2010年5月
分類 REN
著者 餌取 千佳

世界の子育て紹介 リッチモンドだより 1

文化の違いに戸惑いながらも楽しく子育て中

カナダ在住 主婦  餌取 千佳


思いもかけずカナダで子育て

わが家の近くには池があります。
小さなめだかに似た魚や大きなおたまじゃくし。めったに姿は見せませんがザリガニもいます。 子どもたちは毎日のようにそこに行って魚やおたまじゃくしを捕まえます。去年までは小魚を捕まえるのにも大騒ぎで、おたまじゃくしなんてとても手に届かない大物でしたが、今年は小魚はもうつまらないそうで、おたまじゃくしが機敏に逃げるところをサッとすくい上げるのが楽しいんだそうです。いっちょまえになったもんです。
私は大阪の街中で育ち、近所には池も川も空き地さえもないところでした。家の庭でみみずを見つけただけで喜んでいたような子ども時代でした。
 いつか自分に子どもが生まれた時は、自然の多い所で育ててあげたいなあ、と漠然と思ってきましたが、思いもかけず自然の多いカナダで子育てをするチャンスに恵まれ、文化の違いに戸惑いながらも、楽しく子育てしています。

日本語が自然に出てくるには

私たちはバンクーバーの隣街、リッチモンド市に住んでいますが、ここは人口の半分以上がアジア人という土地で、日本食も手に入りやすい環境です。 子どもたちは学校では英語を話しますが、まわりには中国語、インド語、ロシア語など、さまざまな国の言葉を話す家族がいます。 たいていは、どの子も学校で英語を話し、家に帰ると親の母国語を話すといった環境で育っています。
わが家の子どもは週に一度、日本語学校に通い、漢字や文法などを習って帰ってきますが、日本語学校を出たとたんに友達と英語で話しはじめます。勉強として覚えた日本語なんて、子どもたちにとってつまらないものなのかも知れません。
子どもたちの口から日本語が自然に出てくるよにするには、どうすれば良いんだろう?やっぱり遊びながら使う日本語も大切なんじゃないのかな。と、いつしか思うようになりました。 今でも頭に浮かぶ歌、ぷっと笑ってしまうフレーズって、やっぱり子どもの頃のものだよなあ。と。

プレイグループ発足

学校で教わらない日本語。流行り言葉、使うと大人に怒られるような言葉。そんな生きた日本語が子どもたちの記憶に根付けば、きっといつまでも忘れないだろうなあ。言葉に興味を持ってくれれば、美しい言葉にも気づいてくれて、日本語を好きになってくれるんじゃないか。もっと使いたいと思うんじゃないか。 「、、、それなら、そんな場所を作って与えてあげよう。」と思い立ち、友人と三人で"宝島"というプレイグループを発足しました。
週に一度(午前と午後に2時間づつ)日系のお寺をお借りして、日本の手遊び歌や"だるまさんがころんだ"などのやり方を教えて遊ばせています。だんだんと集まってくる人数も増えていき、"宝島"もにぎやかになりました。
季節にちなんで餅つきや運動会もしますが、その度に子どもたちの目一杯、大声の日本語が聞こえてきます。「よいしょ!」やがんばれがんばれ!」など、お母さんたちもついつい大きな声で応援してしまいます。お寺に一杯の笑顔かこぼれる日でもあります。

きっと立派に育てていくはず

この"宝島"を発足する際に、将来的に障害児だけの集まれる日も設けたい。と考えていましたが、そんな折、うちの長男に自閉症の診断がおりました。 自閉っ子を抱えるお母さん達も集まれたら。と宝島の分校として、"レインボーアイランド"も続いて発足させました。レインボー~の方は一筋縄ではいかず、苦戦の続く日々ですが、とても楽しくやっています。
レインボー~に集まるお母さん達は、懸命に我が子の障害と向き合っている人達ばかりです。時に弱く、時に強い自閉っ子母さんたち。 彼女たちはきっと自分の子どもたちを立派に育てていくはずです。そんな思いで二ヶ月に一度、自閉っ子の集まりに力を入れている今日この頃です。 自閉っ子にみるカナダの子育ての仕方を、後々この場をお借りしてお知らせできたら。と考えています。どうかこれから、よろしくお願いいたします。

(C)NPO法人 こころの子育てインターねっと関西