私は、精神科「小児・思春期」専門外来を担当する一方で、主に不登校を中心とした思春期の若者たちへの支援システムをつくる仕事をしてきました。 しかし、もともと小児科医から出発した私には、思春期になるまでの子育てが変わらなければ、思春期の子どもたちの問題も根本的には解決しないという考えが強くあります。そして、ますます深刻化する現代日本の子育て状況を見るにつけ、「乳幼児期の子育てを何とかしなければ」という思いは強まるばかりでした。
そのような折に、子育て真っ最中の母親たちが企画運営している子育て自主グループや子育て情報誌などが全国に無数に誕生し、活動している状況に触れ、私は "希望の灯" を見るような思いがして、とても勇気づけられました。1990年前後のことです。 そして「現代日本の子育て現場で何かが確実に変わりつつある」と実感し、地域で子育て支援に関わっている親御さんたちと、保育士、保健師、教師、カウンセラー、医師などの子どもにかかわる専門職とが一緒につくる子育て支援のボランティア団体 『こころの子育てインターねっと関西』を平成7(1995)年12月に旗揚げしました。
以来、子育て現場のニーズに応えながら活動をすすめてきました。そして、このボランティア団体が母体となり、平成17(2005)年1月にNPO法人こころの子育てインターねっと関西(略称: KKI)として活動を継続・発展させてきました。
子育て支援については、国政選挙でも各党が政策の中心にすえています。 しかし、その政策を見ますと、子育て支援についての考え方は実に多様です。 KKI では、何がほんとうの子育て支援になるのか、子育て真っ最中の親御さんたちの声を常に聴くとともに、科学的な考え方に基づく実践を心がけています。そして、子どもたちが心身ともに健康に育ち、「子育てして良かった」と思えるように親の子育て人生を応援していきたいと考えています。
現代日本のもっとも大きなテーマは「心の問題」です。その心の問題を根本的に解決するひとつの取り組みが子育て支援です。私たちはそのテーマを正面からとらえ、地域の親たちとともに地道な活動を進めていきたいと考えています。
そして現在は、2010年に制作・発表した「親子の絆づくりプログラム"赤ちゃんがきた!" 」(BP1プログラム)と、2018年に制作・発表した「親子の絆づくりプログラム"きょうだいが生まれた!" 」(BP2プログラム)を中心に活動を進めています。
[ 代表プロフィール ]
原田正文 (はらだ・まさふみ)
大阪人間科学大学名誉教授、精神科医師
1945年 香川県高松市生まれ。 京都大学理学部博士課程修了、理学博士。
1980年 大阪大学医学部卒業後、大阪府に入職。大阪府立病院、大阪府保健所などを経て、2001年より大阪人間科学大学教授。2009年4月より2019年3月まで、大阪人間科学大学副学長。大阪府こころの健康総合センターにて、「小児・思春期」専門外来を2012年まで担当。
現在、大阪人間科学大学名誉教授、資格認定機構「Nobody's Perfect Japan」代表、「日本BPプログラムセンター」代表。一般財団法人成研会 結のぞみ病院勤務。「産後ママのこころのケア(産後うつ)」専門外来、「不登校(児童思春期)」専門外来担当。
第1回 BPファシリテーター大研修会 基調報告「BPプログラムの解説と今日的意義」より
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